トロイカチューシャの炎
トロイカチューシャより短くて乱雑だぜ!
後で色々描き直したりするかも(未定)
殺し屋にとって今よりも遥か昔になる話
「いらっしゃい」
「頭部と腹部に刺し傷が二つ。
一応止血等の応急処置は施した。
今は奥の部屋で安静にしている。」
「…女の殺し屋だ。拳銃を持っていた。
それも、並大抵の人間では扱えないような代物をな。」
「なんと。そりゃまた随分と…」
「…分かってるだろうな」
「ああ、他言はしないよ。
マスターも俺を信頼した上で教えてくれたんだろうし。
俺もそこまで馬鹿じゃないよ」
「いや、お前は馬鹿だ。並大抵の人間とは比べようもないほどの馬鹿だ」
「なんだと」
「…まあ、信頼はしている。」
「ああ…そりゃどうも。」
「入るぞ」
「この銃は返す。俺の手には余るからな」
「…殺して」
「その拳銃で私を殺して」
「…それが殺し屋としてのけじめの付け方なのか?」
「人前で傷口を晒す殺し屋なんかに、生きる資格は無いわ」
「おねがいだから…早く…殺して」
「………。」
「殺し屋のくだらんプライドをかけたごっこ遊びなんかに、
俺が合わせる義務は無い」
「少しは助けて貰った事を感謝するべきなんじゃないのか?
…まあ、お前にとってはそのまま雪の中で埋もれ死んでた方が良かったのかもしれんが。」
「もう十分立てるだろう。
何処に行くのか知らないが、泣いてる暇があるんならさっさと帰る事だ」
「うあっ…。」
「幸か不幸か、とにかくお前は奇跡的に一命を取り留めたわけだ。
これも一つの運命だったとして、諦めるんだな。」
「………。」
「もしお前に少しでも俺に対する感謝の気持ちがあるんなら、
今度は「客」の一人として、また俺の店に来い。」
「俺はお前を「殺し屋」として見るつもりは、これっぽっちとして無い。
一人の人間として、お前の事を見ててやる。」
「それが悔しいなら、二度と俺の前に姿を現さない事だ」
「………。」
「ありがとう…。」
殺し屋として生涯を送ってきた人間が、
ただ一人、心を開く事が出来る人間と出逢った。
「いらっしゃい」
〜おわり〜