酒場〜META MALT'S〜

第一回 〜メタとモルツ〜







ヒョオオオオオオオオオオオ・・・・・・・・・・・・・・・・・・







手抜きマスター:
いらっしゃい。
ようこそ、「META MALT'S」へ。


手抜きマスター:
ここは、賑やかな街中の一角にひっそりと佇む静寂の空間……。
街の喧噪から離れたこの酒場には、今日も行き場のないおとこたちが安らぎを求め、ここに行き着く。


手抜きマスター:
俺の名は「手抜きマスター」。
Bar「META MALT'S」のマスターにして、
客人を深い思想の迷宮に誘う
“迷宮の案内人……”


手抜きマスター:
前書きを野垂れているうちに、
さっそく今日のお客さんが、この深い思想の迷宮に
迷い込んだようだ……。
今日のお客さんは、誰かな?




ガチャッ(SE)


俺だ。


手抜きマスター:
お前の名はアカペーン。


アカペーン:
お冷やをくれ。


手抜きマスター:
もうテーブルにおいてある。


アカペーン:
な、(ぇ

ありがとよ。







手抜きマスター:
今からこれを読んでいる読者の皆様方に、
この赤い男、このアカペーンという男が、
一体如何なる人物であるのか、説明をしていきたいと思う。


アカペーン:
なんだいきなり。


手抜きマスター:
彼の名はアカペーン。
Bar「META MOLT'S」の常連客で、いつもいつも俺の店に入り浸り、お冷やだけを飲み続けてロクに代金の支払いもしないふてえ野郎だ。


アカペーン:
俺の目の前で言うなよ。


手抜きマスター:
彼は、ニートである。


アカペーン:
ニートではない。
求職中だ。


手抜きマスター:
そうだったのか?


アカペーン:
ああ。


手抜きマスター:
そうなのか……。
こいつとの付き合いは結構長い。毎日毎日俺の酒場に入り浸っては、「暇だー」とか「金がねえなー」とか言いながら、ダラダラダラダラしがな一日を過ごすものだから、こいつにはもう勤労の意志が皆無なのだと思っていたが。


アカペーン:
流石にそろそろ、ね。


手抜きマスター:
つーかお前、それならこんな所で水を飲んでる場合じゃないだろう。
早くハローワークに行ってこい。


アカペーン:
すまん、ウソをついていた。
俺の居場所はここだ。


手抜きマスター:
いきなり自分自身の存在意義を確かめられても困る。
つーか、ウソかよ。


アカペーン:
いや、存在意義って、そこまで大それたことではない。
一応、マスターの酒場にいる以外にもやってることは色々あるし。


手抜きマスター:
確かにたまに来る時間帯がまちまちな時はあるが、
だいたい毎日だろう。


アカペーン:
まあ、ほとんど毎日だな。


手抜きマスター:
それから、ニートであることも事実だろう。


アカペーン:
まあ、確かにニートだな。


手抜きマスター:
それから、暇人であることも確かだろう。


アカペーン:
まあ基本暇だな。


手抜きマスター:
そうだ。そうやって自分自身の過ちを認めてゆくのだ。
胸に手をあてて、よおく考えてみろ。
それがお前の全てだ。


アカペーン:
つーか、酒場の名前変わったのか。


手抜きマスター:
いきなり話題を変えてきたな。
これからこの店の名前は「Bar META MALT'S」だ。


アカペーン:
「Bar META MALT'S」って、なんて読むんだ。


手抜きマスター:
口語を読みとれよ。
「バー・メタ・モルツ」だ。


アカペーン:
口語という以前に、これは文章じゃないか。
バー・メタ・モルツって、ちょっと技名っぽい並びだな。


手抜きマスター:
全然技名っぽくないぞ。
とりあえず暫くはこれでやっていくと思う。


アカペーン:
名前の由来は?メタって何?モルツって何?


手抜きマスター:
モルツってのはビールっぽさだな。


アカペーン:
ビールっぽさって何だよ。


手抜きマスター:
ここは酒場だからな。


アカペーン:
答えになって無い気がするが……まあいい。
メタとは?


手抜きマスター:
メタはメタだ。


アカペーン:
メタとは?


手抜きマスター:
モルツって名前のビールがあんだよ。


アカペーン:
そ、そうか。
で、メタって何?


手抜きマスター:
正直語感の良さをとって選んだから、あんまり気にしなくていい。


アカペーン:
そうか……。

マスター、おかわり。


手抜きマスター:
もうテーブルにおいてある。


アカペーン:
な、(ぇ

ありがとよ。







アカペーン:
これ、これから続いていくの?


手抜きマスター:
うむ。


アカペーン:
というか、出だしで「深い思想の迷宮」とか言ってるけど、
深い思想の迷宮要素皆無じゃないか?


手抜きマスター:
当初はあった。


アカペーン:
そうだったのか。


手抜きマスター:
正直な所、この回のこの時間軸についてだけは、
年月をかけて何周も何周も同じ時間を繰り返している。


アカペーン:
そ、そうなのか。
なんかSFっぽいが、まああまり深く気にしないでおこう。


手抜きマスター:
とりあえずまあ、これからやっていきたいな。




〜おわり〜


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